戦場をゆけ
 
 
 
 
 
泣かなくてもいいんだよ。サービス。
 
「あれは牧羊犬と言って、ひつじを柵に追い込むのが仕事なんだ。
犬はひつじを食べようとしているわけではないし、噛み付きもしないよ」
 
ルーザー兄貴は優しくそう言って、サービスの頭をなでた。
故郷イギリスの広大な牧羊地に、低空飛行する巨大な飛行船の影がゆったりと泳ぐ。
その黒い影の中を、陽のあたる緑の上を、犬達は伸びやかに駆け回り、あざやかにひつじの群れを追い込んでいった。
 
「かっけえー…」
 
俺の口から出たつぶやきに驚いて、涙の乾かないサービスの目がこちらを見る気配がしたが、飛行船の窓にはりついた俺の目は、訓練された牧羊犬達の動きを夢中で追った。
眼下の牧羊地を駆ける姿さまざまのシープドッグ達は、サーカス犬のようにいちいち吠えろだの走れだのと命令されて仕方なく働いているわけではなかった。
また、働いた報酬である干し肉の為というのでもなさそうだった。
犬は、自分がひつじ達の教官であることを、それぞれがしっかりと自覚していた。
だから導くために吠え、必要があれば走った。
大型や中型、茶色のものや、毛の長いもの。
犬種の違う犬同士は連携を取りあい、白い粒子のかたまりであるひつじの群れを、まとめ、整えながら目的地へ向かう。
どんな死角で子羊がはぐれても、犬達は決して見逃すことはなく、しっかりと安全な群れの中へ戻してやった。
たったひとりの人間である羊飼いの老人は、時折とおくから指示を出すだけで、あとは犬達が取り仕切った。
緑の大地と、白いひつじの群れの王国を統べるのは、まぎれもなく、犬達だった。
 
「ルーザー兄貴!俺、あの犬が欲しい!」
 
窓にくっつけていた額を、歳の離れた二番目の兄に向け、俺は言った。
もうすぐ俺とサービスの誕生日だったから、プレゼントをひとつ貰えることになっていたのだ。
本命だったカービンライフルのモデルガンをマジック兄貴に早すぎるとダメ出しされた俺は、だだをこねてふて腐れいる所だった。
もっとも、犬を見たあとはカービンライフルなんておもちゃはどこかへ吹っ飛んだ。
そのくらい牧羊犬たちの姿はタフで、知的で、震えるほどに格好良かった。
 
「犬?犬が欲しいのかいハーレム。いいよ、それなら兄さんもきっとOKするだろうしね」
 
ルーザー兄貴は二つ返事で約束してくれた。
でも兄貴は結局、あの牧羊犬とは似てもにつかない、小さなスコティッシュ・テリアを買って来たんだっけ。
 
 
 
「ハーレム隊長、通信です」
 
作戦遂行中の司令室は騒然としていて、司令官である俺の前にはいつも通り、赤や黒で書き込みのはいった地図が広げられている。
俺のいる艦の真下には、この地図がそっくりそのままスケール1分の1で広がっているというワケだ。
そして艦が去った後には、このあたりの地図は一から作り直されることになるだろう。
 
「ブロックCからF、民間人の撤退、完了しました」
 
怜悧な中国人の部下はいつも、静かなオフィスで書類でも読み上げるような声で報告をよこす。
もちろんマーカーがその身を置いているのはどこかのビルの一室ではなく戦場であり、手にはコードレスフォンではなくいかつい軍用無線機を握っているはずだ。
 
「よし、予定通り2300、基地の全破壊を決行する」
 
そう言って通信を切った途端、再び無線が入った。
女の次に戦闘が大好きで、タフだがいい加減な元・イタリア軍人だ。
 
「隊長ォ、リキッド坊やがいねーのよ」
 
マーカーがオフィスなら、ロッドはオープンテラスのレストランと言ったところか。
軽い白ワインでも傾けていそうな、のんびりとした口調で伝えられたのは返事をする気もなくなる報告だ。
リキッドがいない。
いい加減なロッドがワザワザよこした報告だからこそ、その深刻さが伺えた。
というのも、ロッドはちょっとやそっとの事では俺に報告をしないからだ。
見てないところで勝手に、そして適当に片を付けてしまう。
気を利かせているわけではなく、俺からなにか言われるのが面倒なだけだ。
後から露見することも多いが、露見しない事はもっと多いだろうと、俺は踏んでいる。
現にロッドは今、リキッドの担当ブロックにまで足を伸ばしているのだ。
自分の区域の撤退を終えて、その報告もせずに頼りない新人の様子を見に行ったのだろう。
そして案の定、その下っ端は問題を起こしていたというワケだ。戦場で行方不明。
あのアメリカ小僧にこう問題が多いのは、奴がまだ入隊して2年たらずだからか?
いや、俺が18の頃はもっとマシな兵士だったはずだ。
 
「その割には人がいねぇのよ。なんか聞いてます?」
 
もちろん聞いているはずがない。
しかし、妙だ。リキッドがいないのに、リキッドが撤退させるはずだった民間人もいない。
ロッドには待機の命令を出し、次の通信に繋いだ。
 
「A方面が騒がしい」
 
Gの声はまごうことなく戦場からの無線連絡だ。
奴のいる場所がオフィスでも、レストランでも、おそらくどこにいても、それは戦場からの無線連絡に聞こえるに違いない。
必要最低限をはっきりとした口調で伝える砂金ほどの報告。
よこされるのが砂鉄では困るが、金であれば何も文句はない。
身体がでかいわりに普段は空気のような存在感だが、戦場へ出るとGの存在は身体のとおり巨大だ。
俺は、いつも一番面倒な場所はGに振る。
わかった、お前は破壊目標へ移動しろ。指示を出して通信を遮断する。
 
事態の深刻さがグラデーションのように濃くなりつつある。
巡回ヘリからの報告で、その色はいっそう濃厚になった。
Gの言った通り、Aブロックに民間人が集結しているらしい。大規模だ、伝えるパイロットの声から緊迫が伝わってくる。
アルファベットの並びでわかるように、問題の起きているAと、リキッドが担当しているBは隣接したブロックだ。
いなくなった隊員と、民間人の集結。
 
「ハーレム…隊長?」
 
何も言わない俺を訝しんで、ざわついていた空気がピタリと止まる。まるで大戦中の緊張感だ。
たかだか一日仕事の現場。
攻撃目標である軍事基地のまわりの民間人を撤退させたのち、一斉攻撃。
基地も町も小規模のもので、特戦部隊からすればこんなものはルーティンワークに近い。
だがしかし、それも民間人からすれば一生涯の賭かった戦争だ。たったひとつの家、たったひとりの妻だ。
そのシリアスさを、どーもあいつはわかってねえ。一体、どんな環境で育てばああ緊張感のない人間に育つのか。
手にしていた煙草のソフトケースを握りつぶす。
中にのこっていた紙巻き煙草はたったの1本だけだったらしく、ぽきりと折れた感触が手のひらに残った。
通信のボタンを押す。
 
「ロッド、リキッドはいい。お前も攻撃目標へ移動しろ。2300攻撃開始」
 
ロッドは何か言いかけたようだったが、俺は通信を切った。
切れる通信を待っていたかのように再び通信ランプが光る。
 
「敵側、捕虜捕獲との情報が入りましたが、坊やが?」
 
「マーカー、2300まであと15分だ」
 
マーカーの言葉にはいっさい答えず通信を切る。
この無線は1対1でしか通信できないが、電波さえ届けば全員の会話を聞く事はできる。
つまり全員が今、「リキッドが捕虜になっている」という極めて高い可能性に気付いている。
軍の捕虜ならまだマシだ。生かされる可能性が高い。
けれど民間人に捕まったガンマ団員は、まず間違いなく私刑にあう。
戦争で家や家族を失った人間は、他人の戦争で飯を食ってるガンマ団員を許すことなど出来ない。
それも相当の人数が集結していると言う。アメリカ人のガキひとりに、まさに「寄ってたかって」の状態だ。
Gから通信が入る。
 
「ブロックAに向う」
 
「G、勝手な行動は許さねえ。攻撃目標へ向え」
 
隊で一番若いリキッドが、まだ18のリキッドが、リンチの果てに死ぬかもしれない。
Gはそれをなんとか救おうとしているのだ。Gは答えない。俺は畳み掛けるように言った。
 
「G、最優先事項はなんだ」
 
Gひとりにではなく、この通信を聞いているであろう隊員全員に俺は言う。
 
「…」
 
Gの沈黙は隊員全員の沈黙だ。
 
「俺たち特戦部隊が、いま最も優先すべき事項はなんだっつってんだ。言え、G」
 
眼下に広がる、うらさびれた異国の市街地を睨む。
見えはしないが、この真っ暗な街のなかに、俺の犬達が散らばっている。
これから破壊される街で、ひとけのない建物の影で、ひっそりとしずまりかえった路地で、目だけを光らせたったひとり。
無線機を握りしめたまま、重い決断に耐える奴らの姿が目に浮かぶ。
 
「…攻撃目標の、全破壊です」
 
「そうだ。2300一斉攻撃を開始する。全員攻撃目標へ向え」
 
ひとつだけだ。
望んでいいのはひとつだけだ。他を望めばそのひとつを失ってしまう。
上手くやればどちらも手に入るかもしれない?
いや、たとえあの時が二度と戻らなくても、俺はいつもひとつ、選ぶ。
 
 
 
 
 
 
死ぬんじゃないか。
口には出さなかったが、マジック兄貴もそう感じていたはずだ。
あいつはどこかマイペースで、柳のように飄々としている奴だったから。
あんな風に、そうまるで物語の中のひ弱な人間みたいに傷ついたサービスを見て、俺達は動揺していた。
18歳のサービスは、右目と一緒に、サービス自身を失いつつあった。
 
「いいか、絶対にサービスには言うな。お前があの場所に居た事は」
 
マジック兄貴はおそらく何度目かのセリフをルーザー兄貴に念押しして、部屋を出て行った。
何度も言うのは、兄貴が心の底で脅えているからだ。
ルーザーがうっかりサービスに真実を告げれば、サービスは生きてはいられない。俺達はそう確信していた。
人は殺せるくせに、どうしたら弟を生かせるのかなんて、想像もつかなかった。だからとにかく阻止しなければと焦っていた。
 
「何故だ…?」
 
ルーザー兄貴は一人掛けのソファに座りこみ、頭をかかえた。
白く透けるカーテンが、五月の風を受けて膨らみ、くしゃくしゃの金髪を撫でる。
もし神がいれば、神に問うていたんだろう。
 
「ハーレム。あいつは赤だったんだ。俺はサービスを守ったんだ」
 
がばりと顔を上げ、喰いつくような血走った目で、兄貴は自分の正義を主張した。
そうかもしれない、けれどその真実はサービスを突き落とす。
この気の狂ったような男は、自分の手が、崖っぷちに立つサービスの肩に乗っていることに、気付いていないのだ。
 
「だめだ、サービスが死んじまう」
 
ルーザー兄貴は、心からサービスを愛していた。それは疑いようがない。
俺は何百回も説明した。何故サービスが右目を抉るまでに傷ついたのか。
根気強い家庭教師のように、時にはヒステリックな女みたいに。けれどそれは徒労に終った。
俺はあのとき初めて知ったのだ。人を殺すのは兵器や、利益や、憎しみだけではないと。
助けたいという思いこそが、サービスを殺す。
それはまるで、地獄だ。
 
「死ぬ?何故だ?命には別状はないはずだ」
 
「違う、本当のことを知ったらサービスは自殺するっつってんだよ」
 
兄貴の口元があの形に歪む。
 
「何故そうなるんだ…?ハーレム、お前にサービスの何がわかる?」
 
兄貴は繊細な髪を振り乱して立ち上がり、俺の襟首を掴み上げた。
その知的な容貌からは想像もできないような野蛮さで、俺を何度も揺さぶった。
何故だ。何故だ。何故だ。
 
「じゃあ兄貴には何がわかんだよ!」
 
ルーザーがかわいそうな奴だってことくらい、マジックに言われなくたって俺が一番よく知っていたさ。
ルーザーは最愛の弟に、サービスに、辿り着きたいのに迷路を脱することが一生できないんだ。それは決まっているんだ。
なぜなら兄貴は目が見えない。兄貴は自分が迷路にいることすら知らない。
俺はケージから決して出られないハツカネズミを見るように、兄貴を哀れんでいた。痛々しく思っていた。
だからって、だからこそ、俺は容赦はしない。
 
「どうせ兄貴にはわかんねーんだろうが!今だって、なんであいつが片目を」
 
俺は最後まで言葉をつなぐことができなかった。ルーザーの目の色が変わったからだ。
その蒼い目に映る俺は、もはやルーザーの"兄弟"ではなかった。家族のひとりではなかった。
映っているのは、"ルーザーの敵"。
ルーザーにとって俺はいま、したり顔でサービスを語り、自分からサービス奪おうとする邪魔者でしかない。そう悟った。
怒りではなく、俺への憎しみで、兄の目が燃えている。
今すぐこの邪魔者を殺してやりたい、兄貴の顔はそんな葛藤と戦っているように見えた。
 
「…いいのかよ、サービスが死んでも」
 
俺は脅える心臓を叱咤して、もつれる舌でなんとかそう言った。
兄貴の唇ががわなわなと震える。俺への憎しみと、サービスへの思いの狭間を、蒼い目がせわしなく揺れている。
やがてルーザーはぐっと顔を近寄せて、至近距離で俺を睨むと、ありったけのの理性をかきあつめたような掠れ声で言った。
 
「言ってみろ、ハーレム」
 
屈辱で軋む奥歯の音が聞こえてきそうだった。
 
「ひとつだけ、お前の言う通りにしてやる。ひとつだけだ。どうすれば、サービスは」
 
 
 
 
…しあわせになれる?
 
 
 
 
「兄貴…」
 
ルーザーの白い頬を伝う、ひとすじの涙を見て、俺は。
 
「…何故だ、って聞くなよな」
 
俺は、"勝利"を確信した。
 
 
 
 
 
 
 
「よう、サービス。ずいぶん顔色がいいじゃねーか」
 
ルーザー兄貴のE地区への赴任が決まってから、サービスは毎日のようにマジック兄貴のところへ通っていた。無論、ルーザー兄貴をあの激戦区へ行かせない為だ。
 
「…」
 
サービスは今日もマジック兄貴に取り合って貰えず、総帥室を出るところで俺と出くわした。
目を合わせようともせず、ドアを開け放したまま無言で去っていく。
 
「ずいぶん、嫌われたな」
 
その様子を見ていたマジック兄貴が、悲しそうに笑った。
 
「まあな」
 
ルーザー兄貴は明日、E地区へ出発する。
マジックはデスクの上で手を組んだまま椅子の背にもたれると、じっと俺の顔を見つめた。顕微鏡のような目だった。
俺とルーザーの間に何かがあった事くらい、兄貴は勘づいているんだろう。
 
「サービスを」
 
兄貴はまるで複数の人間にむかって話すような口調でそう言った。
力なく、組んだ自分の拳に目線を落とし、あきらめるように、諭すように呟く。
 
「死なせたくはないからな…」
 
その言葉の意味が、俺にはわかった。兄貴は今、ささげてしまった生け贄を惜しんでいるのだ。
激戦区に赴く優秀な次男。
仲むつまじい双子の弟達の姿。
自分を頼ってくれていたかわいい末っ子。
マジックはそれらを全て失った。18歳の弟を死なせたくはなかったからだ。
そのための生け贄だ。サービスの命とひきかえにした犠牲だ。仕方がなかったんだ。
マジックはそう言い聞かせなければならない。駄々をこねることのできない兄貴の、ほんのささやかな愚痴だ。
 
 
あの時ルーザーは、「何故だ」という言葉を飲み込んで、俺の言葉にただ頷いた。
それがサービスの幸福に繋がると信じて。
きっとルーザーは考えたこともないんだろう。
サービスの右目を奪っておきながら、サービスのそばに居座り続けるルーザーを、俺が邪魔に思っていることなど。
あんたとぴったり同じように、俺はあんたが邪魔だった。
 
 
「ルーザー兄貴、戦場へ行けよ」
 
 
今ならE地区がいい。俺の言葉を、ルーザーは約束通り何もいわずに飲み下した。愛する弟の幸せのために。
 
サービスの命。サービスの幸福。
 
サービスと双子の兄弟である俺の望みは、2人の兄のそれとは似ても似つかないものだった。
俺が何よりも望んだもの、それはルーザーの不在。
ルーザーさえ消えてくれるのなら、俺は二度とサービスとのあの頃が戻らなくてもかまわなかった。
たとえサービスが俺を憎んでも、二度と会えなくなっても。喜んで捧げた。
そして願った。
 
サービスの隣からあの男を消せるなら。
ふたりを引き離すことさえできるのなら、なんにもいらない。だから。
 
ルーザー兄貴、死んでくれ。
 
 
 
 
 
「ブロックAで爆煙!」
 
作戦指令室に緊張が走った。一斉攻撃の開始時間まであと数分。
臨終まじかの深夜の街は光が乏しく、煙を肉眼で確認することはできない。
ただ暗く沈んでいて、どこかで爆煙が起こっているという事実にたいしてリアリティが欠けていた。
通信ボタンが点滅する。すぐに繋ぐが、ノイズばかりで一向に音声が聞こえない。
 
「おい、どうした」
 
電波障害というよりはまるで、強い風の音でも拾っているようだった。
小枝ひとつ揺らがない、風のない闇夜の戦場から、嵐のような音が聴こえてくる。
やっとのことで、砂嵐のなかに小さな音声が聞き取れた。
 
(迷える子羊を救出)
 
電波のむこうで、吹き荒れているのはロッドの風だった。
 
「隊長、ボーヤに救護班を頼む」
 
今度はもう少し鮮明な音でロッドの声が届いた。
リキッドは無事ではないようだが、死んでもいないらしい。救護班がすぐに出動準備を始めた。
俺は感情が声に出ないよう、言った。
 
「ロッド、23時まであと5分しかねーぞ」
 
「りょーかい」
 
ふと、マーカーとGはどうしただろうかと思った。
俺の予想では、奴らはいいつけを守って黙々と攻撃目標へ向かっている事だろう。
なぜなら奴らの位置からはブロックAは遠すぎるし、ブロックAには一番近いロッドが行くからだ。
 
にしてもロッドの野郎。
 
この短時間でブロックAに辿り着く事ためには、俺との無線を切ってすぐに向かわなければ、不可能だ。
俺はふたたび通信ボタンを押した。
 
「それとロッド。命令違反で罰金な」
 
伊達男のイタリア人は今、23時の一斉攻撃に間に合うように走っているんだろう。
さすがに優雅にレストランとはいかないようで、きれぎれの呼吸音が届いた。
その荒い息を司令室中の人間に、たっぷりふた呼吸も聞かせておいてから、ロッドは言った。
 
「またっすかぁ〜」
 
暗闇の戦場を、俺の犬達が駆けている。
あと2分、間に合わなければボーナス査定にもにマイナスの棒だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
end.