「結局、俺はセロテープだったな」
セロテープ
「ハア?なんか言ったか?」
一休の同室の少年は布団を敷く手を止め、言った。
「小さくなったエンピツが2本あったら、オマエどうする?」
一休はもう一度言い直す事はせず、少年にそう問うた。
「んだよ、イキナリ」
少年はバサリとシーツを布団に被せながら言った。
「いいから、どうする?」
押し入れから布団をひきずりだしながら、一休は答えをうながす。
「くっつけるしかねえだろ。したら長くなんじゃん。それか捨てる」
赤エンピツと青エンピツがベストだな、と少年は笑った。
「でもセロテープがムダじゃん?」
予想通りの答えに、一休は言う。
「セロテープっつーのはそういうモンだろが」
少年はそう即答し、自分の枕を探してキョロキョロと部屋を見回した。
「セロテープがムダとか考えてたら、セロテなんか使えねえし」
つーか何のハナシだよくだらねぇよ、と少年は続けた。
「でもさ、セロテープかわいそうじゃん」
側にあった彼の枕を投げながら一休が反論する。
「セロテープカワイソウ、ってなに?意味わかんねえし」
受け取った枕を自分の布団へ放り、少年は言った。
コンコン
「はあーい」
少年は一休との会話にうんざりしたのか、
救われたようにドアのノックに返事をした。
ガチャリ
「雲水さん」
ドアの奥から姿を現したのは雲水だった。
「一休・・・これ、ああ、君だ」
雲水は部屋へ入り、一休を一瞥すると、さっきまで一休の話相手だった少年のそばまで、
敷かれた布団をよけながら歩いて来た。
「これ、ありがとう。助かった。遅くなってすまない」
雲水の手からパーカーを受け取った少年は、
先ほどとは別人のように恐縮して、いいえこちらこそと言った。
状況がつかめない一休の視線に雲水が気付く。
「お前が帰ってこなかった日な、彼が知らせにきて貸してくれたんだ」
雲水はざっと説明した。
「ああ、そうなんすか」
一休は意外そうに少年を見た。
「一応、洗濯させてもらった。休むところ悪かったな」
雲水は少年にそう言い、じゃあ一休おやすみ、と部屋を出た。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
雲水のノックから6人部屋の部屋は水を打ったように静まり帰っていた。
金剛阿含の兄貴が、わざわざ一年の部屋まで来たのだ。
「なんか、イイニオイしねえ?」
誰かが、ボソリと言った。
「する」
くんくんと鼻を動かしながら、一人が答えた。
少年は雲水から受け取ったパーカーに顔を近づけ、匂いをかいだ。
「・・・コレだ」
金剛雲水から洗濯して返却されたパーカーから香るのだ。花のような甘い香りが。
「嗅ぎたい?」
少年は意地の悪そうな表情で、一休にパーカーを差し出した。
「ハ、ハ?なんでだよ」
うろたえながら一休は一歩後ずさる。
「お前、フラれたんだろ。雲水さんに」
少年は意地の悪さはそのままに、ニヤリと笑った。
「うえっ!!一休ホモだったのかよ!」
ギャー逃げろーと同室の少年達は部屋を散り散りに走り回った。
「なっ、何っ、おまっオカシイだろ!」
一休は盛大に噛みながらも否定する。
「金剛雲水って弟の阿含とアヤシイって前から噂じゃん!」
誰かが言った。
「えっそうなの?」
うっかり一休が反応する。
「はっ、知らなかったのオマエ!」
少年が一休を指さして笑った。
その他の少年たちも、どっと笑った。
顔を真っ赤にした一休を、面々は容赦なく笑った。
「ダッセェー!一休!!」
「マジだったワケ?カワイソ〜」
「君、意味ないですから〜」
「残念!!」
end.
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すこしでもお楽しみいただけたら幸いです。
これにて「巴」シリーズは終了です。
ここまで読んでくださった方、
どうもありがとうございました。
とても楽しかったです!