|
初めまして。私の名前は池田千佳子。
みんなは"チカ"と呼ぶので、よろしければドウゾ。
突然だけれど、5年間って長いと思いますか?それともあっと言う間?
すくなくとも12歳から17歳の間の5年間って、
5年は5年でも人生のなかでもすごく重要な5年間だと思うんです。
背も伸びるし、小学生が高校生になって、子供が大人になる。
男の子なんか声もかわって、もうまるで別人。
5年の間に背の伸びた私と、声変りした同級生の双子。
ああ、そう、きっとあなたのよく知ってる、あの双子。
今日は私とその双子との再会のお話。
|
|
|
「ヤダ、チカ?ほんとにチカなの?」
今日は小学校の同窓会。安いチェーンの居酒屋に集まった6年2組の仲間達。
私は小学卒業と同時に横浜に引っ越したから、みんなと会うのはまるまる5年ぶり。
みんな5年ぶりに会った私を信じられないってカオで見てる。
ほんとに千佳子だよ、といって空いてる席に腰を下ろした。
「久しぶりだな」
私の隣からきこえる低い声、広い肩幅、テーブルの上の大きな手。一瞬、誰かわからなかった。
髪形が5年前とぴったり同じでなければ、きっと名前を訊ねていたと思う。
「雲水君?」
ああ、と彼は照れ臭そうに笑った。
まるで昨日の事みたいな小学生の雲水君の映像と、
目の前にいるりっぱな男の子の笑顔がぴったり重なった。
「大っきくなったね」
「大っきくなったのは池田だろう」
ちなみに私の小学生の時のアダ名は「チビコ」。
名前が「チカコ」だから一字変えただけ。
いつだって列のいちばん前で、前へならえをしたことが無かった。
それが今や身長172センチ。まだ伸びてるんだから人生わからない。
「チビコ」なんていじめられてた頃がなつかしい。よくいじめっこから雲水君が助けてくれたっけ。
そういえば・・・。
「雲水君、ひとり?」
いない、私をいじめた張本人。
「ああ。まあ、来てたとしても、もういじめられないだろう」
こんなに大きくなったんだからな、と雲水君は昔とちっとも変らない顔で笑った。
それもそうだね、と私も笑った。
同窓会のあいだじゅう、私は雲水君と、高校生活のこと、雲水君の部活の事、私の部活の事、
いじめの張本人に雲水君がいまだ苦労してる事、たくさんしゃべった。
それから帰り際、雲水君は意外な事を言った。
「池田、来週土曜、あいてるか?」
文化部だから活動もないし、もちろんあいてると言ったら、
雲水君の耳は真っ赤になって、それまで静かだった瞳の落ち着きがなくなった。そしてこう言った。
どこか出かけないか、池田の行きたい所にでも。
雲水君は5年ですごく大きくなって、低い声になって、男らしくなったけど、
今の雲水君はすごくあどけなくって、やっぱり変ってないなあと思った。
当たり前の事なんだけどね。でもそれが凄く嬉しくて。
うん、行こう。久々にディズニーに行きたい。
気付いたらそう言ってた。
|
「鬼ずるいっす。俺も連れてってくださいよー」
俺の手のひらには2枚のチケット。昨日出会った女がタダでくれた。
そこでダンサーしてるから格安で手に入るんだとよ。
「ずるい?俺がずるい?もっかい言ってみろ。俺がなんだって?」
もう一度言ったら、このままアイアインクローで頭がい骨にぎり潰してやる。
一年坊は俺の手のひらの奥でモゴモゴなんか言ってるが、聞こえやしねえ。
「ブハッ、な、なんすか、じゃあなんでわざわざ俺にチケットなんか見せるんすかもー」
手を離したそばから口の減らねえ奴。
あ?このチケットは何かって?
これはディズニーのフリーパスだ。もちろん俺と雲水のぶん。
それをわざわざ一休に見せる必要?決まってんだろ。
「自慢」
一休が雲水に妙になついてるのは知ってる。ホモなんだろ、たぶん。
ホモはほったらかして、俺は部屋に向かった。
雲水は今日ドーソーカイだったらしいが、もう部屋に帰ってるはずだ。
「うーーんすい、これなーんだ」
「知らん。お前今日俺がどれだけ待ったと思ってるんだ。
行くといったからには時間に来い。携帯の電源は切るな」
雲水は文机に向かったまま振り向きもしねえし、ツッコミがいつもに増して厳しい。
「ごーめんて、マジ、ほんとゴメン。これ、な?これで機嫌なおせよ」
雲水の向かってる文机に、例のチケットを2枚乗せる。
いちど俺を思いっきり睨みつけてから、雲水はチケットを手に取る。
「なんだ・・・?これ」
そうそう、来ると思った。だって雲水がディズニー行った事ねえの、知ってるもん。
「デェズニーのチケット。な、来週土曜に行こうぜ。雲水行ったことねーっしょ」
ぴくり
雲水が動く。じっとチケットを眺める。興味ありそう、いい感じだ。
「断る」
机の上にチケットを戻し、指でつい、とこっちへ押しやる。
「怒んなって、今度はバックレねえからさ」
「いや、予定がある」
「予定?じゃあ、再来週は・・・・」
・・・・・・・いや、まて予定?雲水が予定?練習バカが2週連続で予定?
今回の同窓会だって、雲水にしたら年にいちどあるかないかの"予定"だ。
「阿含、あのな」
雲水はそう言って咳払いをひとつして、窓の方へ顔をやった。
俺もつられて窓を見る。なんの変哲もない寮のカーテン。
「池田って、覚えてるか。池田千佳子」
今度は目線を斜め下、畳に向けた雲水が言った。
「いけだ?ああ、チビコか」
小6の時同じクラスだった女だ。ソバカスでチビでよくからかってやった。その割には泣かない女だったな。
雲水はもう一度わざとらしくゴホン、と咳をして言った。
「その、池田と、出かけるんだ。その、土曜に」
「なんで?」
「なんでって・・・お前だってよく女性と出かけるだろう・・・」
お前だってよく女性と出かけるって・・・そりゃ出かけるけど、なんで雲水がオンナと出かけんだ?
何の必要があって・・・・
「雲水、お前」
嫌な、予感がする。
雲水は一度だって女と二人で出かけたことなんかない。理由もないし、必要もないからだ。
けれど土曜には女と出かける。それは、理由と必要があるからだ。
男が女と二人で出かける事をなんて言うか知ってるか?
"デート"っつーんだ。
「そ、そういう事だ、だから今週は無理だからな」
どもってる・・・図星だ。
イケダチカコ?確かにガキん時は雲水あいつと仲よかったけど、あれから5年だぜ?嘘だろ雲水、まさか、
「チビコにコクんの?」
液体を吸い上げたりトマス試験紙がみるみる染まるように、雲水の顔面がまっかに染まる。
「な・・・ば、ばか、何いってる、で、出かけるだけだ!」
雲水は自分の顔の火照りに気付いているのか、そっぽを向いた。
わ、わかりやすい・・・・。
マジだ。雲水、マジでやる気だ。あのチビオンナに。
「そ、そう?ふうん、雲水が、チビコに、へえ」
すっげぇ・・・
ものすげぇ・・・
ものスッゲェ、腹が立ってきた・・・・。
あんだあのチビオンナ、昔っから目障りだった。雲水のまわりをウロチョロ。
だから、制裁を下してたのに、5年もたってまた現れやがった。しかも、雲水が。
ムカつく。許さねえ、殺してやる。いや、犯してから、まわしてから殺してやる・・・。
俺は興味のない振りして、一週間考えた。
池田千佳子が最高に苦しんで、池田千佳子が二度と現れない為の方法を。
「お出かけっすか、阿含さん」
土曜の朝、寮玄関で靴を履いてる俺に一休が声をかけた。心なしか、声にトゲがある。
「まあな」
声のトゲでは負けねえ、俺は靴を履いて立ち上がった。
「奇遇っすね。俺もっす」
一休は俺に突きだすように一枚の紙きれを見せた。
ディズニーのフリーパス。
ああ、コイツ、俺と雲水が二人で行くんだと思ってるんだった。バカな奴。
「邪魔したら殺すぞ」
"邪魔"とは"俺が雲水とチビコを邪魔する邪魔"の事だ。
「なんの事っすか」
一休はひるまず、そのかわりにニヤリと笑いやがった。
多分コイツは"俺と雲水の邪魔"をするつもりなんだろうが、
そんな説明する必要もねえし、説明すんのも腹立たしい。
雲水はほんの5分ほど前、寮を出た。
あのあと聞きだしたが、どうやら奴等は都合よくディズニーに行くらしい。
とりあえず俺はその二人の間に乱入してやるつもりだ。
あんなソバカスだらけのチンチクリンに雲水を持っていかれてたまるか。
俺の持てる力全てで邪魔してやる。俺は玄関を出た。
「つーかなんでお前と一緒なんだよ!!」
俺の隣には一休。しょうがないじゃなっすかと言う。
出発と行き先が同じなんだから、当たり前といえば当たり前だが、
なんで俺がコイツと一緒に舞浜まで行かなきゃなんねーんだ。
|
「よし、行くぞ」
「オッケー離されんじゃねえぞ」
「うわーおもしろそう」
「あーんドキドキする」
「キモいんだよオカマ!」
一休も阿含も、もちろん雲水も、この戦いに参戦する者達がまだいる事は知らなかった。
そう、"やじ馬"という名のディズニーツアーご一向様。
|
「はい。ああ、阿含か?大丈夫、迷わなかったぞ。すごい人だな。いま入場したところだ。
ああ、そうだな、楽しんでくるよ。ああ、おい、今日はお前帰ってくるのか?わかった、それじゃ」
「今の電話、もしかして?」
俺の顔を池田がのぞき込む。
池田は春らしい黄色の花柄をちりばめたくしゃくしゃとしたコットンシャツに、ひざが破れたジーパン。
ディズニーは歩きやすい格好でなくちゃと言っていた。
「ああ、阿含だ」
阿含がわざわざ電話してくるなんてな。あいつの誘いを断ったのに、すこしは大人になったのかもな。
そっか、と笑って池田は手にしたパンフレットを広げた。
「なにから乗る?ビッグサンダーはやっぱりトリだよね。
カリブかなあ、すごい人だから結構並ぶかもだけど」
困った。池田がさっきから何を言っているのかさっぱりわからない。
たぶんアトラクションの名前かなにかだとは思うが、なにしろ俺は生まれて初めてここにきたのだ。
「あれ?雲水君、もしかして来たことない?ディズニー」
黙っていた俺に気付いて池田が言う。
「ああ、そうなんだ」
俺がそう言うと、池田は開いていたパンフレットを閉じて、ジーパンのポケットに押し込んだ。
「そっか!それならまずは買い物だね」
俺の腕をつかむと、ずんずんと歩き出した。
入り口からまっすぐに歩いて、巨大なアーケードのような洋風の建物に入った。
ちいさな店がならび、まるで日本ではないような風景。その中のひとつに池田は俺を押し入れた。
「あのね、ここに来たらまずコレを買うの」
人でごったがえす店内の棚で、池田が指さした。
キャラクターのついたビニールケースのようなものだ。なかには何も入っていない。
「そうだな、私はミニーで雲水君はミッキーにしよう」
池田は二つを持ってレジへ向かう。
「おまたせ、それでね、これにホラさっきのチケットを入れて服につけるの」
池田はチケットを入れて、自分のシャツの裾と、俺のTシャツのすそに安全ピンでそのケースを付けた。
ここではアトラクションに乗る際、かならずチケットを見せなくてはならないので、
いちいち出さなくて済むようにこうして置くのだそうだ。
「それから、次はこっち!」
俺はまた池田に背をおされて店の外へ出た。
アーケードを渡ってちょうど反対側にある土産物屋に入った。ここも凄い混みようだ。
なるほど、入場してすぐにこのケースを買わなくてはならないのなら、混むのも当たり前だ。
「ちょっと待ってて!」
池田はそう言うとひとごみをかき分け、店内へ消えた。
消えたといっても、今では池田の背は高い。どこにいるのか目で追う事ができる。
池田はずいぶん変ったのかもしれない。
小学生のあの時、池田はほんとうに小さくて、よく阿含からいじめられていた。
めそめそ泣くような子ではなかったが、今日のように俺の背中をずんずん押すような子でもなかった。
「お待たせ!レジすごい混んでた」
再び目の前に現れた池田は、これもまた今まで見たことのない池田だった。
茶色い肩までの髪からは、ふたつのおおきな丸い耳と、赤地に白い水玉のリボンが生えていたのだ。
「ハイ!雲水君はこっち」
俺の目の前に池田が出した物は、リボンがないだけで池田の頭から生えている、
黒くて丸い耳と同じものだった。
「それ、つけるのか?」
そのネズミの耳は池田にはとてもよく似合っていた、だからって俺が似合うとは思えない。
「そ、ここに来たらこれをつけるキマリなんだよ」
池田はそう言ってすこしだけ背伸びをし、俺の頭にネズミの耳をはめた。
「ぷっ!か、かわいい!似合う、似合ってるよ雲水くん」
ショウウィンドーに映った自分は、Tシャツにキャラクターのケースをつけ、
坊主頭からネズミの耳を生やしていた。
とても似合っているとは思えないが、池田があんまり嬉しそうに笑うから、
俺ははずすにはずせなかった。
|
「なんか、スッゲーお似合いカップルってカンジっすね」
俺はワールドバザール内の物影から、一部始終を見ていた。
雲水に電話をして確認したから居場所はすぐにわかった。
俺の口の中には血の味がしていた。唇が切れているらしい。
これほどまでにアタマに血が上った事が今まであっただろうか。隣の一休を殴るのをスルーしたくらいだ。
「つーか、相手のコ、モデルすか?足なっげー」
モデル?笑わせんな。
あのチビ5年で身長、倍くれーになってんじゃねえか。ほんとうにアレが池田千佳子か?
・・・いや、問題はそこじゃない。あの、ミッキーの耳つけてる男が・・・・・本当に俺の兄貴か?
なんだよあのカオ、スゲー優しげだよ、俺見たことねえよ。
「雲水さん、楽しそうっすねー」
ドン!
「く、くるしい、あごんさ、くるしいっす」
気が付くと俺は一休の胸ぐらを掴みあげ、ショウウィンドーのガラスに叩きつけていた。
「ころしてやる・・・ブッ殺してやる・・・」
「ちょ、お、俺殺してどうすんすか!」
その時、誰かが俺の背中をちょんちょん、と指でつついた。
「ブハッ!なんでいるんすか!!!」
そう、俺の後には意外な奴がいた。それも複数。
「ディズニーでバイオレンスとかマジやめろよなー」
呆れ顔のゴクウ、17にもなって手にはネズミの形の赤い風船。
その隣には当然のようにサゴジョーとハッカイ。ハカッイの口はすでにもぐもぐ動いている。
「すごい目立ってるぞ」
なんと山伏。ディズニーがなんて似合わない男なんだ。お前が目立ってる言うな。
「それよりいいの?あの二人逃げちゃったわよ」
サンゾーが言った。つーかなんだそのアタマ。お前までチャッカリミニーちゃんかよ。
「わ、ほんとだ、いないッスよ雲水さん」
一休やサンゾーの言う通り、辺りに二人の姿はなかった。
「雲水ちゃん、たぶんコッチに気付いてたわよ」
|
「ど、どうしたの雲水君!どこ行くの?」
突然雲水君が私の腕をつかんで走り出したと思ったら、もう、全速力。
私がそう言うと雲水君はやっと立ち止まって、走りながら何度もそうしたように後を振り返った。
そしてひどく真剣な顔で言った。
「悪いな、俺は追われていたらしい・・・」
追われていた・・・・?誰に?
私も振り返ってみるけど、人、人、人、ときどきミッキー。怪しい人は見当たらない。
「大丈夫?一体誰に」
ピピピピピピピ・・・・・・
雲水君はポケットから、チカチカと点滅する携帯をすばやく取りだした。
「やっぱり・・・」
液晶を見た雲水君の顔色がみるみる青ざめる。なんて深刻な表情。
ここでは誰もがバカになって子供になってはしゃぐっていうのに。
楽しい音楽や子供の笑い声が雲水君の表情をいっそうシリアスに引き立てる。
ピ・・・・・
雲水君が携帯のボタンを押す。出るわけじゃなさそう。だって長押ししてるもの。
パタン
あ、電源切った。
「雲水君、今の電話の人に追われてるの?ここに来てるってこと?」
私が腕をつかんで軽く揺すると、雲水君は催眠術から覚めたように、顔を上げた。
「あ、いや。大丈夫だ、悪かったな。次はどこへ行く?」
本当に大丈夫・・・?
何か無理してるように見えるけど、多分私に気を使ってくれたんだろうな。
「うん。じゃあやっぱカリブに行こう!」
それから雲水君はやっぱりなんども振り返ったり、辺りを見回したりしていたけど、
私たちは無事に(?)カリブの列の最後尾に到着した。
|
「隊長ミッキー発見しました!」
「何!?捕らえろ!生け捕りだ!」
「ねえ、キャラメルポップコーンの匂いがするんだけど、どこで売ってるの?」
「あ、俺まだプーさん乗ったことないっす」
「阿含ちゃん!ダンボ乗りましょ、ダンボ!」
「うるっっっっっせぇーーーー!うるせえうるせえうるせえぇぇんだよ!!
なんで俺がお前らとディズニーまわんなきゃなんねーんだよ!いいか!良く聞けこの生ゴミ!
いま俺はな、幸せそうな、いや、不幸だろうが余命1ヶ月だろうが妊婦だろうが、
俺の視界に入る生きとし生けるものすべてを、日本刀とかでぜんぶブッた斬ってやりてえ気持ちなんだよ!
気遣え!少しはいたわれ!!雲水を俺の隣に連れてこいーーーーーーーーーーー!!!!!」
シー・・・・・ーン
「声でけえー阿含」
「今、一瞬音楽まで止んなかった?」
「いやだ、阿含ちゃんベビーカーの女性が急いで逃げてったわよ」
「しょーがないじゃないっすか、電源切られちゃったんでしょ。いくらなんでも捕まんないっすよ」
「お?アレ雲水じゃね?」
梅雨入り前の青空を、かろやかに上昇し下降しながら旋回する、重たい鉄の象。
その一頭の象の背に坊主頭と栗色の髪の、二人のネズミが乗っていた。
栗色のネズミは携帯電話をかざし、そのちいさなフレームに入ろうと、
二匹のねずみは頭を寄せ合って笑った。
「雲水・・・」
阿含は、安堵と怒りが入り交じって泣きそうな狂いそうな、
複雑な顔色で空飛ぶ象を凝視した。。
「聞こえっかな、おーーーーーいうんすーーーーい!」
水色の象の腹が見えるところまでゴクウは走り、手を振った。
|
ピロリ〜ン♪
「ちゃんと映ったかなあ?」
「俺は目をつぶってしまった・・・」
「あ、ホントだ、雲水君半目だよ!」
「おーーーーーいうんすーーーーい!」
・・・え?
うんすい?まさか雲水君を追ってるって人?
「ふ、伏せろ!池田!!」
そう言うやいなや、雲水君は私の頭を押さえつけた。
伏せろって何!?
じゅ、銃とか持ってるわけじゃないよね?というか一体なにに追われてるの?
私は雲水君に押さえつけられて、ダンボの中で小さく縮こまりながら言った。
「雲水君、伏せてもさ、ダンボが降りたら意味ないんじゃない?」
ほら、音楽が、ダンボの旋回が、フェードアウトしてきた、
このままゆっくり回りながらダンボはもうすぐ着地する。
ガゴン
「う、雲水君降りないと、止ったよ」
雲水君は相変わらず私の頭をものすごい力で押さえつけてる。
「ダッシュで走れば逃げれるかもしれないし」
ホントに誰?
一体ただの高校生がどんな追手に追われてるの?借金なわけないし、もしかして女?
でも、雲水君てそういうタイプには見えないし・・。
「いや、出口を押さえられた・・・すまん、池田」
雲水君の手はそっと私の頭から離れた。
なんで私に謝るの?私にも危害を加えるような追手なの?一体だれ・・・。
ゆっくり体を起こして、目をあげるとダンボから降りた雲水君の背中。
自分の体を盾にまるで私を守るような広い背中。
私もそろりとダンボを降りて雲水君について歩き出した。雲水君の背中が、俺に隠れていろ、と言っている。
ありがとうございました、と笑顔の店員さんがほほ笑みかける。
私は雲水君の背から思い切って顔を出した。
「雲水!なんで逃げんだよ!バカ!!」
・・・・・・あ。
・・・・・・こ、この人。もしかして。
「バカはそっちだ、なんで付いてくるんだ、阿含」
・・・・・・・やっぱり・・・。
「あ、あごん、くん・・・」
この時、私はどんな顔をしてたと思う?できれば言いたくないんだけど。
ほんと、今思い出しても死にそう。
「よォ、チビコ残念・・・・・なんだお前、なんでカオ赤いの?」
そう、赤面。
それも思いっきり。あ、笑わないでよ!わかるでしょ、あなたなら。
「あの、わたし、だって」
そうだよ、同じクラスだった5年前から、
私の背がちいさくていじめられてた時から、ずっと。
「ヤダ!まさか、阿含ちゃんなの?」
もう、誰よこのオカマ、なんでそんなに鋭いのよ。
しかも私とミニーの耳がかぶってるし。
「えっ!雲水じゃなくて阿含なのかよ!」
「マジっすか、うわー・・・・」
「いじめっこといじめられっこの恋か」
「美しいわね〜」
「それ美しいか?つか、え?ナニ、オマエ、雲水がスキなんじゃねえの?」
わかる?
5年間、ずっと好きだった男の子がいきなり大きくなって、しかも格好良くなって現れた。
その彼が私に向かって、私に何かしゃべってる。
もういっぱいいっぱいだよ。何も考えられなくなるでしょ。
私は夢中で首を横に振った。
「池田・・・まさか、ずっと、阿含の事が・・?」
雲水君が私の顔をのぞき込んだ。そうだよ、雲水君。
今日私そのこと雲水君に相談しようと思って、でもバタバタしてそれどころじゃないし・・・。
色んな事が頭を濁流みたいに流れていくけど、私はやっぱり首を振るしかできなかった。
こんどはタテに。
「だ・・・」
「だーいどーんでーんがえし!!」
「ふっるーーっ!」
「う、雲水ちゃん、シッカリ!!」
「うんすい?おい、雲水!?」
なんかその後、阿含君と一緒にいた人達が大騒ぎしだしちゃって、雲水君もおかしくなっちゃうし、
でも阿含君はすごく機嫌が良くて、私もなんだかすっきりしちゃって、
ちょっとハイテンションのまま、皆でビッグサンダーマウンテンとスプラッシュマウンテンに2回づつ乗って、
舞浜駅でお別れした。
え?私の初恋がどうなったかって?
・・・うん。振られちゃったよ。
帰り際メールアドレス教えてって、阿含君に言ったけど教えてくれなかった。理由とかは聞かなかったけど。
でも、いいんだ。あんなに楽しかったのホント久しぶりだし、フラれても告白できて良かった。
雲水君に何か言われたかって?
ううん、別に。あ、でも今度試合があるとき教えてくれるって言ってた。
アメフトなんか見たことないから、すっごい楽しみ。あの一緒にいた人達、みんなアメフト部だったんだね。
さて、これで私のお話はおしまい。
だけどなんで雲水君、阿含君からあんなに逃げ回ってたんだろう。仲良さそうなのにね。
それだけはホント、今でも謎。
|
作品名 「Mickey and Minnie」
妄想小説化 北川
妄想内容
>阿→雲←一前提の雲水×女(オリジナルでクールビューティー、でもホントは可愛い娘)
>ギャグ
>小学校の同窓会。金剛兄弟は友人だった女と再会。
>実は彼女、横浜にすんでいるらしく早速土曜日に遊びにいく約束をする。
>雲水はこの日に彼女に告白するつもりだ。
>しかし、阿含はその日に雲水とデートするつもりらしく、更にそれを妨害しようと一休が、
>野次馬根性で尾行しようとナーガのメンバーが追いかける。
>果たして雲水の告白はうまくいくのだろうか・・・?
|
余談
スゲー長くなってすいません・・・(謝った!
これでも割とはしょったり、設定変えたりとかしたんスけど、書いてたら止らなくて。
ギャグって書いたこと無かったので、怒濤のギャグ(?)三連発!終了しました〜。
ほんと稚拙でお恥ずかしいかぎりですが、楽しかったです。
それにしても今回はやっぱナーガを置いとくとしたら"オリキャラ"ですね・・・!
いままでチョイ役で出した事はあっても、主役クラスは書いたことなかったので、苦労しつつも楽しく書けました。
設定とか雰囲気とか考えててたのしかった。いつも野郎ばっか書いてるので女の子書くのすごいウキウキでした。
お暇な方はどうぞ。→池田千佳子の設定
ステキ妄想、ありがとやんした!
|